【バガボンド】生まれる時代を間違えた男が貫いた生き方

『バガボンド』は、かの有名な剣豪・宮本武蔵を主人公とした井上雄彦による漫画である。

数々の賞を受賞し、連載当初から爆発的な人気を得たが、37巻を最後に休刊となっている。

また、宮本武蔵は資料が少なく、謎の多い人物である。

そのため、このバガボンドも原作は吉川英治の小説『宮本武蔵』としており、内容は大半がフィクションである。

さらに、井上雄彦独自のアレンジが加えられているため、基本的には史実と混同しないようにしなければならない。

それでも本物の宮本武蔵は、バガボンドを含めた数々の作品で描かれた宮本武蔵像のような、信念のある剣豪だったことを信じたい人は多いだろう。

 

宮本武蔵とは

巌流島での佐々木小次郎との決闘や、吉岡一門との戦いが有名な人物であり、自著の兵法書である「五輪書」によって自身の剣術をまとめている。

その中には、自身が生涯六十余戦無敗と書かれており、それが真実なら大変な剣豪であったといえる。

また、タイトルの『バガボンド』は英語であり”放浪者”を意味している。

きっと主人公の宮本武蔵が天下無双を求めて放浪する姿を指しているのだろう。

 

生まれる時代を間違えた男

これは宮本武蔵を指す言葉として、最もふさわしいだろう。

武蔵は、若くして関ヶ原の戦いや大阪の陣にも参戦したが、その後、徳川家康によって天下統一がなされて江戸幕府が開かれると、徐々に武士の存在価値は失われていった。

武蔵は、幼い頃から剣を極めたいという一心で天下無双を求めて旅に出る。

しかし、もう乱世は治り、剣術を極めようとする者は時代遅れとされている。そのため、武蔵はどこにも定住できないバガボンドになることを余儀なくされたという見方もできる。

もし10年、20年でも早く生まれることができていたなら、その剣術を思う存分発揮することができただろう。

強者を次々と倒し、最強になるにつれ、時代との不調和が武蔵の複雑な心情を描くことになる。

 

天下無双の死生観

幼い頃からがむしゃらに剣を振り続けた武蔵。

師はおらず、自問自答を繰り返し、我流で天下無双を呼ばれるようになった。

しかし、吉岡70人斬り以降は、何のために剣を振り、何のために生きるのかわからなくなっている。

その証拠に、たまたま辿り着いた集落でしばらく米作りに勤しむ。(この米作りにかなり没頭する毎日になる)

剣を鍬に持ち変えるあたり、かなり迷いが生じているように伺える。

天下無双は、天下無双で悩むことがあるようだ。

ただ、楽しいと思って強い者を求めて戦い続けた結果、自分より強い者はいなくなった。

平たく言えば、目標を失ってしまったのだろう。

すると、何のために生きるべきか、迷いが生じるものである。

きっと天下無双はなってからが大変なのだ。

 

脱力感

吉岡一門を倒し、伊藤一刀斎と闘ったあたりから、武蔵は剣を振る際、しきりに「腕は無いと思え」と言うようになる。

悪鬼と呼ばれ、力を込めて剣を振りまわしていた武蔵の強さは本物だったが、そこからさらに強くなった理由はこの脱力を意識したからだと言える。

実は力を入れることより、力を抜く方が困難で、闘いの場面に限らず、無駄な力を入れずに体を動かすことが最も難しいとされる。

言い換えると、うまく力を抜くことができれば良い結果を得られやすい。

宮本武蔵の有名な自画像は、武士とは思えないほどの脱力した姿をしており、この姿が武蔵の強さの秘訣を表している。

 

いざ小倉へ

徳川秀忠が将軍になったころ、武蔵は小倉藩主・細川忠利に指南役として招かれることになる。

小倉は現在の福岡県北九州市にあたる場所で、そこにはすでに佐々木小次郎がおり、運命の闘いが近づいてきていることを感じさせる。

しかしながら、「バガボンド」はそこで長期休載に入り、小倉へ行く武蔵はまだ見れていない。

ここから先は、大阪の陣、巌流島の戦いなどのクライマックスへと続くはずなのだ。

早く読みたくてしょうがないが、力を入れず、脱力して、強いバガボンドの武蔵が帰ってくるのを気長に待とう。

 

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