【鬼平犯科帳】その男、火付盗賊改方・鬼の平蔵につき

現代よりセキュリティが甘い江戸時代、盗賊などの悪人を取り締まるのは、さぞかし大変だったと思われる。

なんせ防犯カメラはなく、指紋という概念もない。

しかし、どの時代にも悪いことを考える者は後を絶たない。

人間とは、いつの時代も愚かな生き物なのだ。

 

時は1780〜90年代の江戸時代。大飢饉によって農作物は不作の時期が続き、各地で打ち壊しが相次ぐなど、世の秩序は乱れていた。さらには田沼意次による悪政が人々の不満を増幅させ、さらに不穏な世の中中を助長させた。

将軍・徳川家治の死後、田沼は失脚したものの、その後の松平定信による寛政の改革も不安定な経済状況が改善することは無かった。

そのため盗みなどの犯罪は横行し、その取り締まりを強化することが幕府としては急務だった。

 

そこで、それらの凶悪犯罪を取り締まる専任の役所である火付盗賊改方(ひつけとうぞくあらためがた)の長官として鬼の平蔵、通称・鬼平(おにへい)と呼ばれる長谷川平蔵(はせがわ へいぞう)を任命した。

火付盗賊改方(通称・火盗改)は、主に火付(放火)や盗賊、賭博などの犯罪を取り締まる幕府直属の役職で、いわゆる地域警察である町奉行とは異なる立場であった。

 

火盗改が求められるようになったのは、盗賊が武装化していき、町奉行では取り締まるのが困難になってきたという背景がある。

非武装の町奉行に対して少々横暴・乱暴な取り締まりが認められていた火盗改は、凶暴な盗賊を取り締まるためには絶対不可欠な存在だったのだ。

そんな火盗改の歴代長官の中でも特に有能だったのが、長谷川平蔵こと鬼平だ。火盗改の誤認逮捕も少なくない中、冷静且つ正確な判断で数々の悪党を捕らえていく。

鬼平の由来は、平蔵が若き頃に重ねてきた悪行からその名が付けられた。しかし、それも若きころの話で、火盗改の長官となってからはすっかり正義感あふれる存在となり、火盗改の腕もピカイチだ。

 

また、この時代の盗賊と言っても、そのタイプは様々だ。

本筋の盗人は、金品は盗むが、人を殺さない。女は犯さない。そして、貧しい人からは盗まず、裕福な人から盗むことを信条とし、しっかり準備をしてお勤め(盗み)を行う。

その一方で、殺人や強姦は当たり前、誰かれ構わず強盗を行うの畜生働き(ちくしょうばたらき)、急ぎ働きといわれる集団も多く、そちらの取り締まりが何とも厄介で人々を悩ませるのだった。

 

そんな中、鬼平率いる火盗改の活躍は目覚ましく、幕府や民衆からの信頼は厚いものだった。

現代においても全ての犯罪を完璧に取り締まるのは難しいが、この時代は特に困難であっただろう。

鬼平のような有能な火盗改がいなければ、さらに治安は最悪な状態になっていたであろう。しかし、鬼平犯科帳を読めばわかるが、正直なところ鬼平は特別な捜査や取り締まりを行っているわけではない。鬼平は剣の腕も確かで、人よりも犯罪に対する長年の勘が働くことがあるが、鬼平が有能といわれるのは、強い正義感を持ち、地道に尾行や聞き込みを行って誤認を防ぎ、確実な取り締まりを行っているからである。

 

これに関してはどんな時代にも共通することであり、裏を返せばこれがなければどんなに科学が発展しようとも、正義の取り締まりは行えないのである。

現代においても、政府や警察組織などを形成しているのは、どこまでいっても人である。

つまり、科学技術が発展し犯罪の検挙率が高まっても、取り締まる側の癒着や賄賂などの悪行が減らなければ本末転倒である。

 

とどのつまり、治安維持とはどこまでいっても最終的には、人の心ひとつで決まるのだ。

我々には、世の中の秩序を乱さないよう、いつの時代においても長谷川平蔵のような正義の味方が必要でだ。

平和を維持するために科学に頼ることは大事だが、何より人間の愚かさを正すことが人類の永遠のテーマだと感じた。

 

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